事業承継対策とは、何をすることですか | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

ご相談事例

事業承継対策とは、何をすることですか

社長

ご相談内容

私は、今年60歳を迎え、すでに長男と次男が役員として会社の経営にタッチしていることから、本格的に事業承継対策を考えています。
これまで、セミナーに参加したり本を読んだりしてきましたが、そのほとんどが、自社株を渡す方法やその時にかかる税金の話がメインでした。
事業承継対策は、税金の問題を解決しただけで完了するものではないと思いますが、いったい何をすべきなのかよくわかりません。

半田道

弊社による社長へのヒアリング

検討すべき事項の整理事業承継対策で検討すべき重要なことは、社長のイス(経営権)と自社株を(支配権・財産権)を、「いつ」「誰に」「どのように」渡すのかということです。
ご相談のケースでは、まず社長のご意向を伺い、ポイントを整理しました。

社長のご意向

いつ渡すのか

社長のイス(経営権)について

具体的には決めていないが、自分が70歳になる10年後に社長交代し、会長として代表権を持ちつつ、後継者の成長を見守りたい。

自社株について

社長交代後、経営手腕を見ながら、自社株を渡す時期を検討する。

誰に渡すのか

社長のイス(経営権)について

長男は真面目だが、社長としてのリーダーシップに欠けると感じている。従業員からの信頼が厚い次男を社長に指名する予定。
ただ、まだ子供たちにはその気持ちを伝えていないし、子供たちの意思も確認していない。

自社株について

子供には均等に渡したい気持ちもあるが、どうしたらいいのかわからない

どのように渡すのか

自社株の評価額を税理士に算定してもらった結果、株価が高いということがわかった。
その価額では後継者が自社株を買うことや、自社株を相続した時の相続税は払えないので、具体的にどうやって渡したらいいのかわからない。
銀行から、投資用の不動産を購入して株価を下げる提案を受けている。株価は大幅に下がるようだが、それが会社にとって正しい方法なのかわからない。

イラスト

弊社からのご提案

社長へのヒアリング結果を踏まえて、ご提案しました。

いつ・誰に渡すのか

後継者は早期に指名する

次男を後継者として育成を始めた後に、社長が次男を後継者に適していないと判断することや、次男自身が社長になることを断念する場合もあるので、早期に次男の意思を確認し、本人に社長になる意思があれば、後継者として社内に発表し、育成を始めることが重要です。
この時に、長男には次男である社長を部下として支えることができるのかどうかを確認してください。
もし、兄弟が不仲な場合には、長男を関連会社の社長にすることや、会社を分割して兄弟別々に経営することなどの検討も必要となります。

自社株は経営に関与する子供だけに渡す

自社株の議決権は、株主総会での意思決定に必要なものですから、株主総会の特別決議を可決できる3分の2以上のシェアを、後継者である次男に持たせると、経営がスムーズになります。
この際に、「兄弟には公平に」と考えて、長男、次男に各50%宛、自社株を渡した場合、もしも兄弟が分裂するようなことがあれば、株主総会での決議ができず、経営が混乱することになります。

どのように渡すのか

社長交代には、取引先や銀行など社外の理解が必要

次男が社長に就任しても、肩書が代わっただけでは、経営はうまくいきません。現社長が、いままで築いてきた信用も同時に引き継ぐことが必要です。
創業社長の信用で成り立っている取引先も多いと思われるので、早期に後継者の顔つなぎをしてください。
尚、後継者が社長に就任した後、当面は代表取締役会長として、後継者の経営をサポートすることは、社外の関係者にとっては安心材料ですが、後継者が独り立ちするのが遅くなるというデメリットもあるので、完全にリタイアする時期も検討して、後継者育成を実行していく必要があります。

納税猶予制度を最優先に検討する

事業承継の際に、自社株を渡す時の税金などの資金負担は、後継者と会社にとって大きな負担です。
「非上場株式を後継者に渡す際の贈与税と相続税の納税猶予・免除制度」の適用を受けた場合、後継者と会社の負担は大幅に減少します。
近年、この制度の適用を受けるための要件が大幅に緩和されました。
ご相談者の会社は株価が高いということなので、まず、納税猶予制度の適用を受けることができるかどうか、また、制度のメリット・デメリットをどう考えるかということを検討してください。

株価対策は会社の目的と合致するのかどうかを考えてから

不動産を取得して株価を下げる効果を実現できるとしても、事業に必要ではない不動産を取得してまで、株価対策をする必要があるのかどうかを考える必要があります。
不動産は価額下落リスクや空き室のリスクがあります。これらのリスクを考慮し、今後の事業計画と株価の見通しを検討した上で実行すべきです。

結果

弊社からの提案を受けて、社長は早速、次男を後継者に指名し、社内にも、その事実を公表した上で後継者育成をスタートされました。
長男は、自分自身は社長向きではなく、後継者になることを負担に感じていたとのことで、喜んで次男を盛り立てるとのコメントがありました。
長男、次男とも、どちらが後継者として指名されるのかわからず、不安な毎日だったのですが、次男が正式に後継者として社内にも周知されたことで、気持ちの整理がつき、兄弟で団結して会社を経営していく決意を固めることができたということです。
自社株は、納税猶予制度の適用を受けて、相続の際に次男に渡す方針で、適用を受けるための申請手続を行いました。
株価対策については、現在検討中です。自社株を渡す時期はまだ先の予定なので、これについては、事業計画に照らして、じっくりと検討される方針です。