提案する前に、まず、社長のお考えを伺いましょう | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2020/5/29

提案する前に、まず、社長のお考えを伺いましょう

社長のお考えを伺う前に提案することは、大きな間違い

税理士、弁護士、中小企業診断士などの士業の方、銀行、証券会社、生命保険会社など金融機関のご担当者は、お客様に事業承継の提案をすることがあるでしょう。

その際、真面目な方ほど、社長のお話を伺う前に自分が考えてきた対策方法を一生懸命提案してしまうことが多いのですが、それは大きな間違いであり、提案内容の良し悪し以前の問題です。
今回は、社長に事業承継の提案をするみなさま(以下、提案者とします)に、「まず、社長のお考えを伺うことの重要性」について、ご説明します。

社長は、自分の苦労話を聞いて欲しいと思っている

これから事業承継を考えようとしている社長は、長い間、さまざまな苦難を乗り越えて、会社を経営してきました。
そんな社長は、一般的には後継者にバトンタッチすることに未練があるものです。
社長としては、まだまだ経営を続けたいと考えていながら、会社の存続・発展のために後継者にバトンタッチをするのですから、寂しいとお感じなのは当然のことです。

ですから、バトンタッチすることはやむを得ないとしても、事業承継の検討において少なくとも、今までの苦労話を聞いて欲しい、そしてできれば功績を称えて欲しいと考えているのです。
そういうプロセスなしに、いきなり提案をされた場合、不躾だと感じて、ご気分を害されることも少なくありません。そんな提案者に事業承継対策のサポートをしてもらいたいとは考えないものです。

社長はご自身の「武勇伝」を従業員や後継者にお話しすることは多くありません。
お互いに、照れくささもあるでしょうし、またそのタイミングもないことが原因でしょう。ですから、社長はご自身の功績を称えられることは少ないものなのです。
ここは、ぜひとも、提案者のみなさまには、社長が経営されてきた会社の歴史について、じっくりとお話を伺っていただきたいのです。

社長の経営に対する考え方を知らなくては、提案の絵を描けない

事業承継は後継者に経営を任せることです。
実際に、これから後継者が遭遇する経営上の困難をどのように乗り越えていくのかということを考えなくてはなりません。

事業承継対策は、自社株を渡す時の税金がいくらかという一時的な対策を議論することではなく長期にわたる会社の存続・発展のために、経営理念や経営についての社長の信条を後継者に伝えることが必要です。
ですから、提案者も経営理念や社長の経営についての信条を知らなくては、社長に目線に合った提案はできないということです。

ニーズを知らずに提案することは、提案者の自己満足の可能性

そして、次のステップです。
どのように事業承継を行うのか?という事業承継対策の具体的な方法について社長のお考えを伺います。
例えば、社長交代と自社株を渡すタイミングについて考えてみると、下記のような選択肢があります。

  • 社長退任とともに、自社株も後継者に渡す方法
  • 社長は退任するが、そのまま会長に就任し、自社株は渡さない方法

  

さらに、自社株を渡す方法についても下記のような選択肢があります。

  • 暦年贈与などの方法で、時間をかけて、少しずつ渡す方法
  • 株価対策をして一度に渡す方法
  • 納税猶予制度(贈与・相続)を使う方法

これらの選択肢を検討する場合、提案者は一般的に、税務メリットのある提案を優先することが多いと思いますが、自社株を渡す際の一時的な税務メリットを追求することは、必ずしも経営上正しくないことがあります
そして、社長は常に税務メリットを追求するとは限りません。

従って、社長がどのような考えをお持ちなのということを、お伺いすることなく提案すると、全く喜ばれないこともあり、単に提案者の自己満足で終わってしまうことがあるのです。
事業承継対策の方法は、さまざまであり、何を重視するのかということで、対策方法は異なります。
つまり、社長が考えている方法に沿って、提案をすることが重要だということです。

まとめ

事業承継の提案において「まず、社長のお話を伺うこと」の重要性についてご説明しましたが、通常の営業活動においても、お客様のお話を聞くことは優先されるものだと思います。
「お客様は何が欲しいのか」ということを聞かずに、「これがいいです」と商品を売る人は多分いないでしょう。
事業承継は商品を提案することではないので、「何が欲しいのか」ということが見えにくいのですが、「どのような方法で事業承継をしたいのか」という風に言い換えてみるとわかりやすいかもしれません。

このように考えて、社長とディスカッションしていただくと、今までよりも社長に共感していただけるようになると思います。

具体的な提案方法を詳しく知りたい方は、【社長に事業承継の話を切り出すための本】をご覧頂ければ幸いです。

  

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