事業承継対策が苦手な税理士さんのサポート記録① ~経営の承継とは何か~ | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2024/4/11

事業承継対策が苦手な税理士さんのサポート記録① ~経営の承継とは何か~

はじめに

弊社は、これまで未上場企業に対し、事業承継コンサルティングを行ってきました。
その業務を行う中で、事業承継コンサルティングのノウハウを身につけたいという税理士さんが増えてきたので、そのノウハウを解説した書籍として、2023年12月に税理士のための事業承継コンサルティングの強化書を出版しました。
机上の理論ではなく、事業承継の実践の現場で税理士さんが顧問先に対して何をすればいいのかということを、わかりやすく解説しております。


そして、現在は、その内容を解説した税理士さん向けのセミナーを実施したり、実際の業務で税理士さんと協働しながら、アドバイスを行っております。

これらの税理士さんへのアドバイスの事例は、顧問先に事業承継コンサルティングを行いたいと考えている多くの税理士さんのお役に立つと考え、その内容をnoteで連載していくことにしました。

事業承継対策が苦手な税理士さんからのご相談

弊社のお客さまの顧問税理士さんとは、協働して事業承継対策を行っていました。
税理士さんは田中さん(仮)です。

弊社と税理士さんとの役割分担は、弊社が事業承継対策で取り組むべきことを分析し、お客様のご意見を伺いながら、事業承継のプランを検討する中で、スキームの実行における税金の計算・申告等の手続きなど、税理士業務の部分は、顧問税理士さんにお任せするというものでした。

ある日、顧問税理士の田中さんから、ご相談がありました。

田中税理士は、これまで、顧問先の事業承継対策に、少しは関わってきましたが、弊社が行っている事業承継対策のサポートは、税理士が行っているものとは全く違うと感じ、そして、そのサポートに関して、社長や後継者がとても喜んでいることに、大変驚いて質問されたのです。

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経営の承継と自社株の承継の区分

【解説】
次の図をご覧ください。

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まず、事業承継には、経営の承継と自社株の承継の側面があります。
一般的に、税理士さんが取り組んでいるのは、この内の④財産権の承継であり、経営の承継➀②と自社株の承継の③支配権の承継は取り組んでいないことが多いものです。

経営の承継とは

田中税理士は、経営の承継に関しては、ご存じないということでしたので、その解説をしました。
さらに、経営の承継を分類すると、次のようになります。

上記の①➁の中には、かなり多くの取組むべき事項が含まれているため、詳細は、今後、説明いたしますが、ここでは少しだけ解説します。

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【解説】
会社を創業した時のことをイメージしてください。最も重要なことは、社長が誰になるかということです。
どんなに優れた技術や営業力がある社員がいても、それらをまとめ上げる人がいなくては、経営はうまくいきません。
したがって、これから会社を牽引していく能力のある人を、後継者として選び、育てることが重要であるということです。

ですから、まだ未熟な後継者を育てる前に、自社株を渡す時の税金のことを議論しても本末転倒ですし、社長の心には響きません。

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【解説】
同族会社の場合、後継者は社長の息子であることが多いと思いますが、社長の息子というだけで、社長の資質や経営能力があるわけではありません。
特に創業社長はカリスマなので、後継者がそのレベルに達することはかなり困難です。
とはいえ、社長にふさわしい資質をもった人を後継者候補に選定し、後継者を一人前に育てなければならないということです。
後継者が単に社長の座に就くだけでは、事業承継は完了ではありません。

これは、相当多くの項目がありますので、ここでは、その一部をご紹介します。
後継者が社長として会社を牽引していく際に重要な、取締役会の再構築を行い、次世代役員の選定・育成や、現役員のリタイア時期、業務引継ぎ、退職金の支給額を検討したり、社内規程の見直しを行うこと等があげられます。

経営の承継について、まとめてみましょう。

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自社株の承継

【解説】
後継者がスムーズな経営を行うためには、一定割合の自社株を所有することが大切です。

創業社長に対して逆らう人は、あまりいないので、支配権を意識されていないことが多いのですが、次世代になると、兄弟や従兄弟の経営になることがあり、その場合には、後継者が支配権を確保する重要性が高まります。

後継者が株主総会の特別決議を可決できる2/3のシェアを確保できれば、それが一番良いのですが、そうでなければ、2/3のシェアを確保するために、誰かから自社株を買取ったり、後継者とその味方になる株主で2/3のシェアを確保することを検討する必要があります。

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【田中さんの考え】
支配権の承継については、理解はしていました。
税理士としては社長の方針が決まれば、譲渡や贈与の価格や税金についてアドバイスしていましたが、株主構成は社長が決めることであって、「経営目線で、株主構成はこうあるべき」という検討や提案はしてきませんでした。

また、私は普段、社長とだけ面談しているので、社長のご親族のことは存じ上げません。
誰が後継者の味方になるかどうかの判断は、難しいでしょうし、2/3を確保するためには、一部の株主から自社株を買い取る必要性もありそうです。
親族との交渉をサポートしなくてはならないと考えると、なかなか時間がかかりそうな課題です。自分ができるかどうか・・・。

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社長が所有されている自社株の評価や、株価対策、そして自社株の移転方法、社長の個人財産の贈与・相続などは、税理士さんの専門的な分野です。
これについては、多くの税理士さんが取り組まれていますし、税理士さん主催のセミナーの大半は、財産承継をメインに解説していると思います。

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つづく・・・。

事業承継対策が苦手な税理士さんのサポート記録➁ ~社長に事業承継の話を切り出す方法~

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