バトンタッチはまだ早いとお考えの経営者のみなさまへ | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2020/3/13

バトンタッチはまだ早いとお考えの経営者のみなさまへ

いつになったら、バトンタッチできるようになるのでしょうか

後継者候補が修行を積んでも、なかなか社長のような経営手腕を発揮するようにはならないでしょう。

それでは、任せられるレベルとはどのような水準でしょうか

例えば、後継者が、創業社長のように会社をゼロから興して、発展させてこられた方に匹敵するような水準にまで育つと考えるのは、無理があると言えます。

ですから、後継者は社長のレベルには達しないという前提で考えないと、バトンタッチする時期は、永遠に来ないのかも知れません。
そうなると、社長が生前にバトンタッチをせず、亡くなるまで経営をされるということになってしまい、後継者は社長としての経験がないまま、突然会社を経営することになります。
その場合の、後継者の負担は図りしれませんし、会社の混乱も予想されます。

育たないのではなく、育てていないのではないでしょうか?

それでは、後継者候補が社長から「一人前になった」と言われるためには、どのような能力を身につければいいのでしょうか?

社長の能力として、最も重要なことは、『決断すること』です。
今まで、会社の良い時悪い時、荒波を乗り越えてきた社長は、様々な状況で「決断」をされてきたと思います。
その中には、良い決断だけではなく、悪い決断もあったはずですが、それらの経験は次の良い決断をするために活かされたと思います。

つまり、後継者候補は、社長になって経営上の決断を経験しないと、能力は身につかず、今後、会社を担っていけるようになるのかどうか本当にはわからないということです。
従って、後継者が育たないと言って、いつまでも社長のイスを渡さないことは、後継者を育てていないということになります。

自社株は渡さずに、社長だけ任せる方法

「社長のイスを渡す=リタイア」とお考えの社長も多いと思いますが、必ずしもそう考える必要はありません。

事業承継で後継者に渡すのは、社長のイス(経営者としての地位)と自社株の2つです。
この2つを同時に渡す場合には、リタイアとお感じになると思いますが、 自社株は渡さずに、後継者候補に社長のイスだけ渡し、現社長は会長職について経営を任せる方法もあります。
後継者候補に自由に経営をさせ、時には、失敗も経験させて育てるということは、後継者の育成にとって、効果的な方法です。
そして、育成状況をみながら、後継社長に権限を委譲していくと、スムーズな事業承継が実現できます。

社長初心者の後継者候補には、経営判断に関して正しい答えを示してくれるのは、先代経営者しかいません。
先代が会長として残ってくださることは、ほどよい助走期間になるということです。

ダメだったら、自分が返り咲く

しかし、そうは言っても、まだ経営を任せることには踏み切れないという社長もいらっしゃるでしょう。
そこで、お考えいただきたいことは、会長職に就いた後に、もし、後継者候補が社長に向かないというご判断をされた場合には、社長に返り咲くという方法もあると思います。

ユニクロの柳井さんも一度社長を退いた後に、また社長にカムバックされました。この場合は、後継者候補が社長に向かなかったということではないと思いますが、第三者に社長を任せた後に、また社長にカムバックされたことは大きなニュースになりました。
ご自身がカムバックすることは、対外的な印象がよくないとお感じかもしれませんが、世の中を見ると、絶対にあり得ないことではないのです。

また、後継者候補が順調に育ったとしても、環境の変化や災害などにより、会社の経営危機が訪れることがあります。
そういう状況になった場合には、会長が社長にカムバックすることは、当然ではないでしょうか。

最後に

後継者候補に社長のイスを渡すということは、後継者候補を一人前にして、会社を発展させるという目的を達成するプロセスだとお考えください。
後継者候補の社長就任によって、取引先や銀行は、後継者候補の方を向いてしまう可能性があり、寂しいお気持ちになるかもしれませんが、それは仕方がありません。
後継者の育成と会社の発展のために、割り切っていただく必要があるのです。

尚、バトンタッチが遅れた場合の問題点につきましては、【事業承継がゼロからわかる本】に、詳細な解説をしておりますので、お読みいただければ幸いです。

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