事業承継対策は何から始めればいいのでしょうか | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2020/1/20

事業承継対策は何から始めればいいのでしょうか

社長ご自身のお気持ちの整理が最優先

事業承継対策を考える時、後継者を誰にするのか?自社株をどのように渡すのか?という検討をイメージされることが多いと思います。

しかし、そのような事業承継対策の方法論を、慌てて考える必要はありません。

長く経営されてきた会社ですから、まず一度立ち止まり、今までの経営を振り返って、ご自身のお気持ちを整理することが大切です。

社長は孤独な存在であり、どんなに頑張っても実際に功績を称えられることは、多くありません。

事業承継対策の方法論を考える前に、ぜひ一度、ご自身の功績を振り返り、満足感に浸っていただきたいと思います。

そして、経営されてきた歴史の中では、会社の業績が良い時、悪い時があり、楽しい思い出や様々なご苦労があったはずです。

成功した事業、うまくいかなかった事業や投資、苦労をともにした役員や従業員、お世話になった取引先などのことを思い浮かべ、お気持ちを整理してください。

それらを振り返ることで、次に会社を担う後継者を選定する基準が生まれたり、後継者に経営をする上でこれだけは守って欲しいことなどが明らかになるでしょう。

それは、事業承継において会社を渡す方法や渡す相手のことを考えるよりも、重要なことなのです。

後継者に伝えるべきことを整理する

社長がどのように、困難を乗り越えてきたのかという事実や会社に対する想いは、後継者にとっては、これから経営する上で、とても重要な道標になります。

これは、後継者が本を読んだり、ビジネススクールに通っても決して得られるものではなく、唯一、社長から伝えられるものです。

それでは、具体的に何を伝えるべきなのかを整理します。

  • 会社が発展してきた経緯
  • 経営理念・・・・・・・・・・・経営する上で、守って欲しいこと
  • 会社の強みと弱み・・・・・・・会社が好業績な理由と改善すべき点
  • 実現できたこと・・・・・・・・成功事例とその要因
  • 実現できなかったこと・・・・・失敗事例とその要因
  • やり残したこと・・・・・・・・事業計画、社長の夢
  • 取引先や金融機関について・・・取引経緯や過去のできごと
  • 役員や従業員についての情報

これらの情報は、後継者に日常業務を引き継ぐこととは異なり、経営者として知っておくべき重要な内容です。

書面に残した上で、後継者にご説明ください。

事業承継対策をする!という覚悟をする

社長が、ご高齢になると周囲は、社長の事業承継対策への取組に関心を抱いています。

事業承継対策の提案をしてくる税理士や金融機関だけでなく、従業員も口には出さないものの、事業承継問題は自分が将来も給与をもらえるのかどうかという問題でもあるので、関心を抱いていることが多いものです。

従業員のみなさん全員が社長に辞めて欲しいと思っているわけではありませんが、社長が事業承継対策を検討しているのかどうかわからないと、不安になるのは事実です。

事業承継対策の着手は、社長にしかできないことです。

次世代でも経営がうまくいくように準備することは、社長として最後の大仕事です。

将来も会社が発展するために、事業承継対策をする!という覚悟をした上で、計画的に進めてください。

何年後にバトンタッチするのかを明確に決める

事業承継対策を始めても、何年後にバトンタッチをするのかが決まらないと、後継者にバトンタッチする前に、社長のご相続が発生してしまうことがあります。

後継者の選定や育成が十分に行われず、自社株を渡す方法も未決定のまま、突然の事業承継が行われると、会社は混乱しかねません。

そこで、バトンタッチする時期を明確に決め、親族や役員に発表することは、事業承継の計画が立てやすく、社長のイスに未練がある社長ご自身としても、退路を断つことができる良い方法です。

まとめ

以上のご説明内容が、事業承継対策のスタートラインです。

社長には、金融機関、税理士、コンサルタントから「自社株の評価が〇△億円なので、利益を下げて株価対策をした上で、持株会社に自社株を譲渡しましょう」という提案がなされているかもしれませんが、その前に、ぜひ今回の内容を実行していただければと思います。

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