経営体制の構築① | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2020/9/11

経営体制の構築①

親族の関係と会社での上下関係

日本の同族会社には、100年以上も存続されているケースがあります。
これは大変素晴らしいことですが、同族経営ならではの悩みもあります。

それは、経営陣、株主の大半が親族である、つまり親戚同士であるという関係と会社での上下関係という2つの側面が存在し、経営において、その2つの関係が絡み合うということです。
経営者一族ではない、一般家庭であれば、「兄弟姉妹、親戚の叔父さん、叔母さん、甥っ子、姪っ子」のように、その関係は、年齢が軸となっています。
しかし、経営者一族の場合には、その親族内の年齢という軸のほかに、「社長、専務、常務、部長」等という会社での上下関係が加わるために、その関係が複雑になります。

親族経営の複雑さ

それでは、下記のケースで、その問題点を考えてみます。

次世代が兄弟経営の場合

1人の創業者でスタートした会社で、2人の息子が次世代の経営者になる場合、長男と次男という兄弟の上下関係に会社での役職という関係が加えられるということになります。
長男が社長で次男が専務という関係であれば、兄弟の上下関係と会社での上下関係が同じであり、問題はありません。
かつては、家督相続のように長男が跡継ぎとして、社長になるというケースが多かったと思いますが、昨今の困難な経済状況下では、兄弟の上下関係ではなく、社長としての適性を判断して次男を後継者にすることも珍しくありません。

次男が社長になった場合、世の中からは、「長男は次男より経営者として劣っている」とみられる可能性もありますし、そうでないとしても、長男としては、弟よりも劣るというレッテルを貼られた気分になることでしょう。
従って、この場合には、長男の対面を保てるように、兄弟を各々別の会社の社長にすることや、長男を代表権のない会長、次男を代表取締役社長にするなど、工夫をする必要があります。

創業社長世代が兄弟経営の場合

創業社長が兄弟で会社を経営している場合、従来の会社では、一般に長男が社長であることが多く、この場合は、兄弟の上下関係と会社での上下関係が一致しており、問題ありません。
しかし、次世代の経営になると関係が複雑になります。
例えば、創業社長の兄弟のうち、創業社長だけが退任し、長男が後継者となって社長に就任したとします。
その場合、後継社長は親戚の叔父さんや叔母さんを部下に持つことになり、親族の上限関係と会社での上限関係が逆転してしまい、後継者としては簡単なことではありません。

仮に、後継社長から見て、叔父さんたちの経営方法が古臭くて時代に合わないために、改革を行おうとしても、子供の頃から遊んでくれたり、面倒を見てくれた親戚の叔父さんや叔母さんにそれを納得させることが難しいことはおわかりいただけると思います。
そのようなケースでは、創業社長の退任と同時に、創業社長の兄弟も同時に役員を退任し、相談役や顧問などのポジションに就いていただくと、後継社長は経営がしやすくなる可能性があります。

また、創業社長の兄弟の子供、つまり後継社長のいとこも経営陣になる場合や、創業社長の長男ではなく、次男が後継者社長になる場合などは、さらに問題は複雑になります。
これについては、個々のケースで解決していかなくてはなりません。

まとめ

このように、後継社長がスムーズな経営をするためには、親族役員との関係を調整することが必要になります。
後継社長のための経営体制の構築は、創業社長(現社長)が考え、バトンタッチの前に実行することが大切です。
事業承継対策は、自社株にかかる税金の対策にフォーカスされがちですが、経営体制をきちんと構築することの方が重要であるということです。

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