持株会社活用のデメリット⑤ | 株式会社クロスリンク・アドバイザリー

コラム

2021/2/12

持株会社活用のデメリット⑤

さて、今回も持株会社のデメリットについて、ご説明します。

自社株の受け皿としての持株会社

持株会社のそもそもの目的は、グループ企業を統括し、グループ企業全体の意思決定の迅速化を図り、経営と事業を分離して効率化を図ることなどです。
そして、それに加えて、事業承継対策の場合には、グループ経営の効果よりも、現社長の自社株を買い取る受け皿として検討する場合があります。

社長が所有する自社株が高額な場合、後継者は買い取ることができません。
仮に個人で借入して自社株を購入しても、返済原資の確保は容易ではありません。
そこで、金融機関やコンサルティング会社からは、「社長が所有している自社株を、後継者が出資する持株会社が買い取る」という提案が多くなされています。

ただし、前回のコラムでもご説明したように、会社が買うといっても、事業を行っていない、実態のない持株会社の場合には、自社株購入資金の調達と借入返済は容易ではありません。

持株会社のデメリット③ ご参照

経営実態のある会社が買うという選択

それでは、そのような複雑な方法ではなく、もっとシンプルな方法についてご説明します。
それは、社長が所有している自社株を、その発行会社が買う方法です。これは、自己株式の取得、俗に、金庫株と言われています。

持株会社への譲渡と金庫株の違いについて、ある金融機関から弊社のお客様宛の提案書に記載されていたました。
それは、下記のような内容です。

  • 自社株を持株会社に譲渡すると、譲渡益に約20%がなされる
  • 金庫株の場合には、みなし配当課税で約50%の課税がなされる
  • 従って、金庫株の方が損である

しかし、これは、正確ではありません。
各々の計算構造をみてみましょう。

【持株会社に譲渡する場合】

自社株を持株会社に譲渡すると、譲渡益の約20%を納税します。
つまり、納税後は、自社株の評価額80%の現金が残ります。
そして、仮にこれを使わないとすると、その現金に対して、最高税率55%の相続税がかかります。
最初に20%で済んだと思っていても、あとで55%かかることを忘れてはいけません。

  • 自社株の評価額×約20%+(自社株の評価額-約20%)×55%(相続税の最高税率)

【金庫株の場合】

これに対して、金庫株の場合、みなし配当課税として、約50%の税金を納めます。つまり自社株の評価額の50%の現金が残ります。
そして、仮にこの現金を使わなければ、相続時には、この50%部分の現金に最高税率55%の相続税がかかります。

  • 自社株の評価額×約50%+(自社株の評価額-約50%)×55%(相続税の最高税率)

持株会社への譲渡も、金庫株も、実行・納税後には、現金が残ります。そして、この残った現金には、相続税の課税がなされるので、それも考慮しなくてはいけないということです。

持株会社への譲渡は、20%で、金庫株は50%。つまり30%も持株会社への譲渡の方が得をするという単純な比較ではないということがおわかりいただけたでしょうか。

次世代以降への影響

現社長から後継者に持株会社を活用して自社株を承継したとします。
これで現社長としては、自社株の承継が完了したとして、一安心の状況になったとしても、後継者にとっては、事業実態のない持株会社をどうするのかという問題が残ります。

もちろん、冒頭に申し上げましたように、グループ経営を目的とした持株会社であれば、意義のあることですが、自社株の受け皿だけがその目的であれば、持株会社を維持していくことが後継者の負担になることもあります。

例えば、純粋持株会社の場合には、株価算定上、「株式保有特定会社」という状況になり、一般には株価が高くなることが多く、株式保有特定会社にならないように不動産を取得するなどの対策が必要になる場合があります。

また、後継者がその次の後継者に自社株を承継する場合には、また自社株の受け皿としての持株会社を作らなくてはならないのか?という問題もあります。
つまり、納税額の差は、それほど大きなものではないのに、自社株の受け皿だけのために、持株会社の借入・返済の仕組みを作り、次世代以降にも影響するような状況を作ることに、はたしてメリットがあるのかということをお考えいただくのがよろしいかと思います。

ご留意事項

尚、金庫株の実施により株主構成は大きく変化します。
社長の所有株式について金庫株を実施すると、他の株主の持株シェアが増加するため、株主構成によっては、金庫株は適切な方法ではない場合があります。
持株会社の活用については、納税額の多寡だけではなく、これらのことを総合的に判断していただく必要があります。

持株会社の活用も含めて、事業承継対策について、ご相談のある方は、弊社websiteのお問い合わせフォームより、ご連絡いただければ幸いです。
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