未上場企業の株式の評価方法見直し➁ ~ 有識者会議の内容を受けた銀行提案について考える~
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- 前回のコラムでは、国税庁が「取引相場のない株式(非上場株式)」の相続税・贈与税評価方法について見直しの検討を進めていることをご説明しました。
株価算定方法が変更されれば、中小企業の事業承継に与える影響は非常に大きいと考えられます。
こうした動きを受け、銀行などの金融機関でも情報提供とあわせて、顧客に対する提案を行うケースが見られるようになりました。
今回は、私が顧問先で実際に目にした銀行提案を例に、その内容と留意点についてご説明します。
ある銀行の提案内容
最近、次のような提案を見かけるようになりました。
🙋♂️「有識者会議の結果、税制改正が行われると、貴社の株価は上昇することになります。その前に、持株会社に自社株を譲渡しましょう!」
【提案内容の骨子】
・有識者会議の結果、株価算定方法が見直され、現在の類似業種比準価額方式が適用できなくなる。
・一般的には、株価算定の結果は「純資産価額>類似業種比準価額」となることが多い。
・現在、類似業種比準価額方式が適用されている会社は見直し後には純資産価額方式で評価される。
・その結果、現在、類似業種比準価額方式で評価されている会社では、株価が上昇する。
もちろん、お客様のためを思っての提案であることは十分に感じられます。しかし、この提案にはいくつか留意すべき点がありますので、ご説明いたします。
♦Point① 「純資産価額>類似業種比準価額」という前提に立っている
一般的には、前述のとおり「純資産価額>類似業種比準価額」となるケースが多く、大会社では低い方の類似業種比準価額方式を適用できる場合があります。
その前提に立つのであれば、この提案には一定の合理性があります。
- (ご参照:会社規模と株価算定方法の選択)
しかし、すべての会社がそのような状況にあるわけではありません。
中には「類似業種比準価額>純資産価額」という状況の会社も存在します。
類似業種比準価額方式は同業他社との比較によって算定するため、例えば同業他社と比べて利益水準が高い会社では、一般的な傾向とは異なる評価となることがあるのです。
このような会社では、現行でも純資産価額方式によって評価されるため、今回、類似業種比準価額方式の計算方法が見直されたとしても、株価評価に影響が生じないことになります。
♦Point② 株価算定方法が具体的に決まっていない段階で、改正を前提としたスキームを提案している
有識者会議では、類似業種比準価額方式だけでなく、純資産価額方式や配当還元価額方式の課題、さらには新たな株価算定方法についても議論されています。
現時点では、類似業種比準価額方式が廃止され、純資産価額方式のみとなる方向性が示されているわけではありません。
- しかし、私が拝見した提案では、将来的に純資産価額方式のみが適用されることを前提としており、あたかも近い将来に税制改正が実施されるかのような説明がなされていました。
もちろん、税制改正の方向性を踏まえて事前に対策を検討しておくことには大きな意義があります。
一方で、有識者会議では制度設計そのものが議論されている段階であり、改正内容や実施時期は何も決まっていません。そのため、現時点で特定の改正内容を前提に持株会社化などのスキームを提案することについては、慎重な判断が求められるのではないでしょうか。
まとめ
金融機関などが、制度改正の動向をいち早く情報提供することは非常に重要な役割です。
一方で、具体的なスキームを提案する際には、お客様の利益を最優先に考えたうえで、本当に今実行すべき対策なのかを十分に検討する姿勢が求められます。
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- 中小企業の持続的な成長と円滑な事業承継は、日本経済を支える重要な基盤です。
- 金融機関や専門家には、その実現を支えるパートナーとして、制度改正の動向を冷静に見極めながら、お客様にとって最適な提案を行うことが期待されます。
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